講談師「神田松之丞」落語家との違いはココ!
ENGEIグランドスラム2018で一気に世に存在が知られた神田松之丞さん。その神田松之丞さんは「講談師」と呼ばれるジャンルに属しています。
講談の歴史は落語より古く奈良時代にまでさかのぼるといわれています。
その講談を語る講談師、神田松之丞さん本人が絶滅危惧種と表現するほどなり手が少ないのだそうです。
現在落語家は約800人ほど存在するそうですが、講談師はその10分の1の80人ほど。しかも半分が女性なのだそうです。
その中で一番若い男の講談師が神田松之丞さんです。
講談は難しい表現が多い上に落語のように枕(雑談)がなく、とっつきにくい、わかりにくい部分があるようで、落語ほどの笑いも少ないようです。
ところで講談と落語の違いというのはどこなのでしょうか。
◆講談と落語の違い
講談(こうだん)とは、日本の伝統芸能のひとつ。
演者は高座におかれた釈台(しゃくだい)と呼ばれる小さな机の前に座り、張り扇(はりおうぎ)でそれを叩いて調子を取りつつ、軍記物や政談など主に歴史にちなんだ読み物を、観衆に対して読み上げる。上方講談においては、張り扇と拍子木を併用する。
落語(らくご)は、江戸時代の日本で成立。
他の芸能と異なり、衣装や道具、音曲に頼ることは比較的少なく、ひとりで何役も演じ、語りのほかは身振り・手振りのみで物語を進め、また扇子や手拭を使ってあらゆるものを表現する独特の演芸であり、高度な技芸を要する伝統芸能
講談は神田松之丞さんのような講談師(もしくは講釈師)と呼ばれる人が演じます。
演じるネタは軍記物(太平記、真田軍記など)や政談(大岡裁きなど)や、有名な事件等の歴史物語がメイン。
講談は歴史物を中心とした物語を巧みな話術とテンポで聴衆に聞かせる朗読劇のようなものです。
それゆえ、落語の演目が「出し物」と呼ばれるのに対して、講談は「読み物」と呼ばれるそうです。
落語は口伝で伝えられるので基本的に台本などは無く、語り聞かせ、時に仕草も交えながら演じる芸能。ゆえに落語は話す、語る、しゃべる、演じるという表現をされます。
一方講談はもともと「軍記読み」などとも言われたように物語を読んで聞かせる芸能であり「読む」と表現されます。
「釈台」と呼ばれる机を使うのは元々本を読みながら語っていた名残なのだそうです。
落語は、会話でなりたっている話芸であるのに対して講談は物語を読む芸であると言えます。
同じ寄席芸能で見た目は似ていますが、まったく違う芸能なのです。
◆講談と落語 中身と見た目の違い
一見似ているようでまるで違う芸能、講談と落語。
見た目としてにわかる違いとしては
・座布団に座って登場人物の会話で噺を説明し、しゃべるのが「落語」
・座布団に座り「釈台(しゃくだい)」という机を置き、リズムを取るために「張り扇(はりせん)」を使ってバンバン机をたたきながら講談師が情景を説明していくのが「講談」
中身の違いとしては
・一般的に笑い噺などが多いのが「落語」
・軍記物や英傑伝が多いのが「講談」
と言えるでしょう。
余談ですが、「講談社」という出版社は、講談の本を販売していた出版社だったのでそういう名前になったそうです。
◆講談は「リズム」落語は「間」
噺家(落語家)と講釈師(講談師)がまったく別の人種で、交流がないのかと言えばそうではなく、講談の話を落語家が演じたり(講釈ネタと呼ばれる)、噺家の作った噺を講釈師が語ることもあるそうです。
内容的には境界線があいまいに感じても不思議ではないのかもしれません。
しかし話の展開の仕方が決定的に違います。
落語は噺家が登場する人物になりきり会話を中心に物語を進行していきます。
対して、講談はあくまでも講釈師(講談師)が一人で物語を紹介するように進行していきます。
講談はリズムとテンポ、声の大小を変え、まくし立てるかのように話を展開させますが、これは黙々と棒読みで語るだけでは聴衆がまちがいなく話に飽きてしまうからだそうです。
まくしたてるような早口が特徴の講談は独特のテンポとリズムで、たくみに聴衆を物語に引き込んでいくのです。
落語が話の「間」を重要視するのに対し、講談はしゃべりの「調子」と呼ばれるリズムを重要視します。
故桂枝雀師匠が生前「落語は緊張と緩和」で笑いが生まれるが、講談は「緩やかな緊張が続く」と表現していました。
また落語には話しにオチがつきますが、講談は特にこれといったオチがないのも特徴のひとつです。
◆今後の講談界をひっぱる神田松之丞
落語と違い、笑いは少ないですが「語り」に引き込まれる講談という話芸は、素晴らしい魅力がいっぱいの伝統芸能なのです。
神田松之丞さんは落語も講談も異常なまでに好きなのだそうです。
神田松之丞さんの講談を聴くと落語のエッセンスである「笑い」がかなりはいっているように感じます。
神田松之丞さんのような若く柔軟性をもった講談師がもっと増えると、講談ももっと盛り上がっていくのではないでしょうか。
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